調査概要

「トランスジェンダーに関する全国会議員意識調査」(以下、「本調査」)の目的は、 立法府の構成員、すなわち国会議員の、トランスジェンダー当事者(性同一性障害と診断された者に限らない。以下「当事者」)に関する法や生活における課題への理解と、 課題解決への各議員の取り組みを把握することである。 調査方法は郵送によるアンケート形式とした。 当事者についての理解や、現行法令による取扱い、当事者の生活における困難への認識や、解決のための政策への賛否を選択式の設問として、党派別を軸に集計した。

調査対象とした国会議員は、令和4年(2022年)第208回通常国会当時に現職であった衆参両院の全議員と、同年夏に行われた第26回参議院議員選挙に当選した新たな議員に対して実施した。 前者は同年5月下旬、後者の42名に対しては選挙後の同年8月中に、それぞれアンケート用紙を国会議員会館事務所宛に郵送した。

設問の概要

多肢選択式16問と、自由記述1問の計17問で構成した。

設問の構成は以下に示す表1のとおり。

表1 設問構成
分類設問数回答形式設問内容
関連する法について7問多肢選択式性同一性障害者特例法について
LGBT理解増進/差別解消法案への賛否
関連する自身の政策1問自由記述自身あるいは所属政党の掲げる関連政策
性別欄5問多肢選択式広く「性別欄」の扱いについて
公的書面における性別の表示について
通称名4問多肢選択式当事者の通称名の利用に対する理解
戸籍名を変更する既存法制について
清瀬市採択の陳情1問多肢選択式令和4年清瀬市議会第1回定例会で
全会一致にて採択された陳情および意見書

(アンケート全文は、以下のウェブサイトにて公開: https://yui-kitamura.eng.pro/s/ds(PDF))

※本調査における「通称名」

「性同一性障害当事者が自認性と沿うように名乗っている氏名」を指す。 特に、報道においては、いきなり単に「通称名」とせず、一度上記の趣旨に触れていただきたい。

当事者が名乗る通称名の取り扱いは、現在法律に規定が無く、本調査の実施者は、取り扱いの法制化を要望している(後述、清瀬市での陳情の箇所参照)。 住民基本台帳法および施行令に定めのある、在日外国人住民の通称名とは、まったく異なるものである。

一方で、用語としては健康保険証への記載に関する厚労省通知などで単に「通称名」とされており、新たな言葉の割り当ても無い状況である。

結果概要

回答状況

対象全750名(内訳:衆議院現職465名、参議院改選前243名、参議院新規当選42名)の国会議員会館事務所宛にアンケート用紙を郵送し、内55名(7.3%)から回答を得た。

また、参議院選候補者1名(落選)からも回答を受領した。

主な政党(所属国会議員10名以上)ごとの回答状況は、以下に示す表2のとおり。

表2 主要政党の回答状況
政党名所属議員数回答数(率%)備考
自由民主党393名3名(0.8%)-
公明党62名8名(12.9%)-
日本維新の会62名3名(4.8%)参院選候補者1名(落選)の所属政党。
左記数字には含めていない。
国民民主党28名4名(14.3%)-
立憲民主党147名19名(12.9%)-
日本共産党23名12名(52.2%)党首(志位和夫氏)からも回答あり

他、政党所属計13名の内2名から回答受領。社民党党首(福島みずほ氏)からも回答あり。また、無所属議員22名の内4名から回答受領。

回答に際しては、各議員により郵送やFAX、あるいはメール添付など様々だったが、すべての回答内容をウェブサイトにて公開している。
https://yui-kitamura.eng.pro/s/dr
※一覧のExcelデータは個別に問い合わせいただいた場合に提供します。

LGBT/SOGI関連への問題意識を持って活動に取り組んでいる議員が積極的に回答しており、回答者の分布に偏りが見られる。 関連法案の賛否を問う設問では圧倒的賛成多数で、また、当事者の抱える課題に対する理解度は高く数値化されているなど、回答内容にも偏りが見られた。

自由記述で各議員のLGBT/SOGI関連の政策を質問したが、議員個人の活動のほか、政党としての方針を引用する回答が複数見受けられた。

なお、回答集計に際して例外が一部発生した。多肢選択式の設問については、設定した選択肢からほとんどの場合で選んでいただけたが、一部で択一での回答ができず、記述回答を受け取った事例が存在した。 この場合、数値化する集計においては除外しているが、回答内容を公開している上記ウェブサイトでは注記として記録している。

結果詳細

議員から受領したすべての回答内容はウェブサイトで公開している。 https://yui.eng.pro/s/dr

本資料では、分析とその他補足情報を述べる。以後のグラフ資料の出典は以下のウェブ公開記事である。
本調査の回答分析https://yui.eng.pro/s/da

また、記載の内容は2022年6月26日付で私,北村の所感および主張を交えた公開ウェブ記事と一部重複するものとなっている。
本調査の結果公開https://yui.eng.pro/s/rb

1.政党別の回答状況について

 
図1 党派(会派)別回答率

上図は党派(調査時点の院内会派を含む)別の回答率を図示したものである。

自民党が新規当選者1名を含めても計3名のみの回答に留まった一方、立憲民主党からは19名、また、日本共産党からは所属議員の過半数の12名から回答を受け取った。

なお、N党の回答者1名は浜田氏であるが、事務都合で回答が送付されてこなかったものの、私設秘書がブログにて回答内容を公開していた。 そのため、当該秘書と連絡を取ったうえで、掲載内容をもって、正式に受領回答とした。

党首の反応

全回答者55名の内、政党代表者が2名含まれている。日本共産党の志位氏と、社民党の福島氏である。両名の個別の回答内容は以下のリンク先を参照されたい。

また、会派代表者では、参議院会派「沖縄の風」の伊波氏も回答を寄せている。

2.関連する法規への理解

本調査では、当事者に関わる既存の特例法とその内容、および、国会への提出の動きがあった理解増進あるいは差別解消の各法案への賛否や関与度合いを質問した。

性同一性障害者特例法

現行法である「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律 (平成15年法律第111号、以下「性同一性障害者特例法」)」の存在の認知と、規定されている性別変更の要件の認否を質問した。

回答者の内、法の存在は1名を除いた98%が認知していた。当該法律での具体的な条項である性別変更要件(成人であること以外の、現行で適用されている3つの要件)については、90%前後の認知状況であった。 手術による性別の適合要件は91%が認知していた。また、未成年の子がいないこと、とする要件は87%の認知率であった。

一方で、未婚要件の認知率は83%に留まった。未婚要件は、性別変更が当事者個人の問題に留まらず、配偶者や子といった家族との法律上の関係性に影響し、 昨今、国会での議論や、一斉提訴により裁判(MarriageForAll)となっている同性同士での結婚にも波及するものである。

LGBT(SOGI)理解増進/差別解消法案

法案に対する、2021年通常国会当時の賛否と、2022年通常国会時点での賛否をそれぞれ質問した。いずれの時点についても、与野党問わず賛成が得られ、賛成が全体の9割であった。

同法案は、2021年の通常国会で提出が図られたものの、自民党内の反対意見により提出すら叶わなかった。本調査では、自民党所属議員からの回答が十分に得ることができず、精査は叶わなかった。

なお、本調査は2022年5月の通常国会会期終盤時点のものであることを念書しておく。

3.関連する自身の政策

本設問は自由記述での回答とした。回答者の65%が何かしらの記述があった。以下、抜粋で紹介する。

  • <勉強会>立憲民主党SOGIに関するプロジェクトチーム、院内集会、レインボー国会 <公約>ジェンダー平等社会の実現(他2つ) 立憲 福山氏 https://yui.eng.pro/s/de/02030808
  • LGBT超党派議連に参加 立憲 西村氏・共産 田村氏
  • 党綱領,公約にLGBTについて記載 共産党所属議員複数
  • 毎年、地元青森のレインボープライドに参加。様々な生き方や価値観を互いに尊重し合い、自分らしく生きていける「一色に染まらない!」社会を皆さんと一緒に実現させたい 立憲 田名部氏 https://yui.eng.pro/s/de/02031106
  • 時間の許す限り、東京レインボープライドパレードなどに参加するとともに、懇談などにも積極的に参加してきました。 性の多様性を認め合い、性的マイノリティーへの差別をなくし、誰もが個人の尊厳を尊重できる社会の実現に力を尽くします 共産 小池氏 https://yui.eng.pro/s/de/02031208
  • 性同一性障害特例法の改正を目指す 立憲 辻元氏 https://yui.eng.pro/s/de/12030613

他、選挙区で開催されているレインボープライドへの参加実績や、理解増進あるいは差別解消法案、また、同性婚に関する前向きな立場を表明する言及が多数であった。 加えて、党内あるいは超党派のLGBTに関する勉強会やプロジェクトチームの役職者という回答も複数あった。

4.性別欄

本調査では、性別欄について2つの観点で質問を設けた。 1つ目として、性別欄の廃止が進んでいる現況の評価を質問した。2つ目として、公的身分証における性別の記載について質問した。

性別を回答する記入欄

本調査では廃止状況に対する主観的な評価を質問事項とした。

現況評価の設問に対して、行政での廃止状況を不十分とする回答が92%に上った。その一方で、自民党については3名中2名が「十分に取り組まれたものと評価」しており、他政党の比率と比べて際立っている。 なお、民間への浸透具合については、全員が不十分との回答で一致している。

性別欄については、廃止ではなく回答欄の選択肢を変える、あるいは任意回答にするといった方向性で、国立社会保障・人口問題研究所が研究を進めている。 また、男女共同参画に関しては男女の別が集計にあたって必須であるなど、廃止することが最適解とは限らない。 しかしながら、アンケート等の設問においては、男女の別を問う必要性について検討が必要であると考える。

身分証における性別欄

公的身分証における性別の表記についての現況理解と、マイナンバーカード(以下、「マイナカード」)の券面への性別印字に対する立場を質問した。

マイナカード券面への性別記載について、廃止すべきあるいは再検討すべきと92%が回答した。

現在、公的な身分証明書として、自動車運転免許証(以下、「免許証」)が広く利用されている。免許証の券面には性別の表記が存在しないが、本人確認が免許証1点のみの呈示で完了する(犯罪収益移転防止法施行規則第7条)。

一方で、同様行政が交付する本人確認に資する身分証としての役割を持つ(同施行規則同条)マイナカードでは、法定事項として券面に性別を印字することとなっている(個人番号法第2条7項「カード記録事項」)。 券面事項は施行令ではなく法律の条文に記載されている為、記載を廃止するには国会審議を通過する必要がある。与党系からも再検討すべきという回答が大半であり、契機があれば改正に向けて動くものと期待している。

(参考)マイナカードにおける性別記載の国会審議

個人番号制度の法制化が審議された第189回通常国会内閣委員会(2015年5月)にて共産党池内委員が質問をし、山口大臣(当時)と内閣府副大臣、総務省審議官から性別の表記に対する検討の経緯などの答弁を引き出している。
(衆議院議事録 内閣委員会6号 https://kokkai.ndl.go.jp/txt/118904889X00620150515/263

また、別日の討論で、マイナカードへの保険証機能統合との兼ね合いもあり、検討が必要であると答弁がなされている。 この点、現に機能が提供され始めたが、券面を医療事務者に見せることが無い運用で実現されており、マイナカードに性別を表記する必要性について再考すべきと考える。
(衆議院議事録 内閣委員会8号 https://kokkai.ndl.go.jp/txt/118904889X00820150522/119

(参考)マイナ保険証と性別記載

現行の「紙の保険証」について現在、厚労省通知(平成24年保国発0921第1号)の「性別の表記方法を工夫しても差し支えありません」を根拠とし、 表面には記載せず、裏面の備考欄に「戸籍上の性別は~」といった記載の工夫が各保険者により実施されている。 (券面の参考資料:協会けんぽ https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat298/

この手続きに則って登録されたマイナ保険証のデータは、「性別:登録なし」となっており、裏面記載事項として別途、戸籍上の氏名性別が記録されている。

5.通称名

上述「設問と回答内容の概要」のフレームで述べた通り、本調査および本報道発表における「通称名」とは、性同一性障害当事者が自認性に沿って日常生活に用いる氏名のことを指す。

姓は家族や親族への偏見を避ける目的や、出生時の性別で馴染んでしまっている周囲の環境からの移行のために、戸籍と異なる姓を名乗ることがある。 また、名前については、その名前から性別が推測されやすく、生活している自認性に沿った容姿などと相反してしまうことで、 第三者に対して、意図せず当事者であることのカミングアウトを強いられてしまうことを避けるために、自認性に沿った印象のある名前を自ら名乗ることがある。

*当事者に対する通称名などの利用実態については、別途、調査を当事者団体と実施したので、別途団体から発表が予定されている

通称名とその手続きへの理解

本調査では、通称名に関連して4つの設問により、姓と名のそれぞれについて、戸籍名と異なる通称名を利用していること、法的な改姓・改名手続きについて質問した。

名前から性別が連想されるということは理解がされやすく、92%が通称名で戸籍と異なる「名」を用いることを認識していた。一方で、直接的に性別には影響されない「姓」については少し認識度が下がり、88%だった。

戸籍上の氏名を変更する手続きについての設問は、姓と名で別個の設問とした。

名の変更については、通称名を名乗る実態を知っている議員のほとんどが手続きの存在を知っていると回答した。 一方で、姓の変更は、法の定める変更要件が異なっていることで性同一性障害当事者の通称としての利用があっても、姓の変更が困難であることを認識している議員は割合が79%まで下がった。

(参考)戸籍法に基づく氏と名の変更

性同一性障害当事者が用いる通称名は法的な定義づけが弱い。ただし、戸籍名を変更する法的手続きは戸籍法で定められている(戸籍法第107条および第107条の2)。

「姓」(法では「氏」とされている)の変更と、「名」の変更については、それぞれ法で定める変更の要件が異なっている。 法律上は「姓」についてはやむを得ない理由を要件としている一方、「名」については正当な事由が要件とされている。 なお、具体的な判断要件は定められておらず、家庭裁判所の裁判官の裁量に委ねられているのが実情である。

(参考)健康保険証に関する厚労省通知

平成29年(2017年)8月末に厚生労働省保険局の所管課長発出の通知『被保険者証の氏名表記について』(保保発0831第3号)により、 健康保険の被保険者証について性同一性障害当事者が通称名の記載を希望する場合で、保険者が認める場合については、被保険者証における氏名の表記方法を工夫しても差し支えないものとされた。

これにより、従来型保険証の場合は表面氏名を当事者の生活実態に沿った性の印象となる通称名とし、裏面に戸籍名を記載する、といった記載の工夫が認められている。

昨年(2022年)9月16日に全国健康保険組合(協会けんぽ)がお知らせを更新し、記載変更の手続きについてオンラインで様式を取得できるようにしたほか、国民健康保険の事務を所管する各地の自治体が案内をウェブサイトに掲載している。 すべての保険者が一律で対象となる通知であるが、その対応状況は各保険者や窓口となる自治体によりまちまちである。

また、マイナカードと連携した健康保険証情報については、従来型保険証と同じ情報が登録される。氏名情報が通称名となる他、前述の通り性別欄は「登録なし」が記録されている。

マイナポータルの健康保険証情報画面
図2 マイナポータルでの対応した保険証表示

6.清瀬市採択の陳情

令和4年(2022年)3月に、東京都清瀬市の市議会は、第1回定例会にて、陳情『性同一性障害に伴う通称名の公証に係る陳情について』を全会一致で採択した。 また、意見書『性同一性障害に伴う通称名の公的書類への記載を求める意見書』を全会一致で可決し、衆議院・参議院議長や内閣総理大臣宛に提出した。

採決のあった本会議には、朝日新聞武蔵野支局の取材が入り、東京の地方面に記事が掲載されたほか、デジタル版で記事が配信された。 また、政党新聞である「しんぶん赤旗」にも記事となり、掲載された(いずれも、)。

設問16への回答分布

回答のあった議員の内、約半数が「知っている」と回答した。地方議会での議決と意見書に対する認知度としては、期待以上の数値である。 東京地域を選挙区とする議員のほか、全国比例、さらには、他地域を選挙区とする議員からも認識している旨の回答が得られた。

7.総括

調査回答内容について

回答を寄せてくださった議員の大半がLGBT/SOGIを政策課題として掲げており、バイアスのある調査結果となってしまったが、以下の主要な分析結果が得られた。

  1. 政党によって課題意識に差がみられる(回答率・回答内容の分布)
  2. 性同一性障害当事者が抱える課題と関連する法律が一定数の議員に認識されている
  3. マイナンバー制度に関連して、券面への性別印字について9割を超える議員が廃止あるいは再検討をすべきと回答した
  4. 通称名の利用実態と、法的な改名について、過半数の議員が認識しているが、姓と名とで差がみられる結果となった

調査結果を踏まえて

本調査は、清瀬市議会に提出し採択された陳情の主旨である「通称名の公証」を軸に、関連する事項を設問として、国会議員の意識調査をしたものである。 関心を持っている議員の方々からの反応が得られたことは大きな収穫であると考えている。

党派別に、LGBT/SOGI関連への課題意識の高低が見られたことは、国会全体の情勢報道と相関を感じられる内容であった。 同性婚の法制化が実現される際には、性同一性障害者特例法の未婚要件も議論の対象として取り上げられることを期待している。 また、マイナカードの券面事項と法定されている性別の記載についても、必要性の見直しを訴えていきたい。従来型の保険証では、 氏名と性別の表記について厚労省通知をもとに工夫した運用が認められているが、マイナ保険証でもそれらの工夫に対応した仕組みになっていることは評価したい。

保険証は健康保険の被保険者証明の券面である。 これに対して、身分証明書としての性格をはっきりと持つマイナカードや免許証、それらの記載事項の元である住民基本台帳への、通称名の登録について、実現し得る制度案の提示など、理解のある議員を巻き込んで推し進めていきたい。

所感

本調査は、北村由衣個人にて実施したものです。本節では、個人としての所管および、今後の展望や期待を記載します。

調査に際して、700通を超える文書を封緘して郵送しました。 通常国会の会期末を見据えた忙しい時期の個人によるアンケートにも関わらず、回答を寄せてくださった議員の皆様へお礼を申し上げます。 また、返送に際して内容に即した一筆を添えてくださった方からは、関連政策への熱意を感じました。

封緘前のアンケート用紙封緘途中

政党別回答状況

国会での動きなどを見るに、自民党所属議員からの回答はあまり来ないだろうと見込んでいたものの、いざ締め切ったときに3/393(=0.8%)の回答率となったのは驚きました。

一方で、野党, 特に過半数の所属議員およびトップから回答のあった日本共産党、および、立憲民主党などからは多数の回答を得ることができ、党内での政策に対する一体感や、個々議員の温度感が感じられ、良い回答状況だと感じました。

法令関係

性同一性障害者特例法には、現に婚姻をしていないことという要件が規定されています。国会で同性婚の法制化が検討される中で、この「未婚要件」がどのような取り扱いを受けるか、関心を持っています。

性別欄

性別は、本人確認に際して不要な項目である、と私は考えます。世間大衆において2つにしか分類しない「男女別」は、1個人を特定するにはあまりに括りが大きすぎて、実効性が無いからです。 さらに、性同一性障害当事者にとって、自認性と異なる公的に記録された性別で本人確認をされることによるカミングアウトの強要や、自我の否定といった要素に繋がります。 この考えのもとに、本人確認書類、特に行政の発行するマイナンバーカードの券面事項からの削除の立法措置を求めています。

会員登録やアンケート調査に設けられる性別欄は、未だ多くで「男性」または「女性」の二択で、かつ必須回答ものが多くあります。 医療的な有症率の差異や、男女共同参画の施策といった観点で性別を統計要素とする必要性は理解できます。 しかし、日常生活で目にする多くの性別の回答欄には必要性を感じないものが多くあります。 この状況に対して、選択肢として「その他」を用意することが考えられますが、その回答をすることは、集計者に対して当事者であることを自白するような行為であり、望まぬカミングアウトや、回答内容を見た者によるアウティングのリスクも懸念されます。 そのため、私,北村は、性別回答の任意化、および、(医療や政策のための調査を除いて)社会生活を送っている性別での回答を受け入れる社会的風潮の醸成に期待しています。

通称名

2022年に清瀬市議会に陳情を提出し、委員会にて趣旨説明や委員との質疑をしてから1年が経ちました。陳情内容に含めた以下の立法措置は、私が今でも要望するものです

  1. 性同一性障害者特例法の定めに当てはまらずとも、性自認について出生時と異なると自覚を明確に持つ者について、行政が自認性に沿った通称名を記録証明すること。 これにより、当事者が自認性に沿った生活を円滑に送ることができるようになることを期待している
  2. 記録証明の実務として、住民基本台帳に通称として記録すること。住民票の写しに記載すること。 ただし、記載にあたっては、当事者であることが直接的にはわからないように配慮すること(例えば、「(通称)北村由衣」のみを氏名欄に記載するなど)
  3. 公的な資格証や身分証明書へ記載する氏名を、戸籍名と通称名とで当事者が選択的にできるようにすること。性別移行の段階によって、主に用いる氏名も移行することに対応する

いずれも、住民基本台帳法や関連法制・施行令などの改正が必要であり、国会による対応が必要です。LGBT/SOGIに関する超党派議連や、法の所管省庁への働きかけを考えています。

総括

所感の各節で書いた通り、私,北村は国会議員などへの働きかけを通じて、通称名の公証や性別の印字廃止といった目標に向けて、できることを進めていきます。

清瀬市議会での陳情採択後、本調査を送付したことで、清瀬市議会議員へ国会議員からの問い合わせがあった等、政党内の連携がある様子がちらほらと耳に入ってきました。 これからは地元議会から国会へと私の活動舞台は移りますが、4月の統一地方選では各候補者の掲げる政策を注視したいと思います。

清瀬市議会では与野党問わず全会一致での採択となりましたが、国会全体でどのような反応になるかを推し量ることは難しい情勢です。 しかし、ご理解とご協力をいただける議員さんや当事者の仲間、あるいはアライの方々と共に、前向きに進めていきたいと思っています。


なお、清瀬市議会での陳情採択の報道直後には、SNS,特にTwitterにて「戸籍の改名で済む話だ」といった性別移行が済んだ状態ならできる論法や、 「身体の手術による移行をさっさと済ませろ」といった個人の自己決定権に関与してくるような反応を含め、批判的侮辱的な反応がありました。 本調査の発表に際しても、また今後の活動でなにかしらの成果物が出るたびに、同様繰り返されるものと想定しています。これらの内、正当な議論・批評の枠を超えるものについては必要な措置を講ずるつもりです。


最後までお読みくださった各位、ありがとうございます。

以上


情報

本調査について

本報道発表について

以上

寄付のお願い

本調査の経費はおよそ6万円です。個人負担にて実施しております。ご支援をお待ちいたしております
6万円内訳:郵送料56,000円、紙3,000円、インク代4,000円

¥1,000~ オンライン決済で寄付する

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